『永遠の夏をあとに』①こぼれ話&作中に登場する作家と本のご紹介(*一部、作品の内容に触れている箇所があります。 了解の上、お楽しみくださいませ!)




+キャラクター自己紹介+

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彰「『永遠の夏をあとに』主人公、羽矢拓人(小6男子)の友人かつ、
クール&インテリジェンス担当こと葉越彰です」

数馬「小夜子(サヤ)さんはどこだ?」

彰「出てくるから!作中曲やテーマ曲紹介のとこで!帰ろうとすんな!
はい、『雨ふりの日に段ボール子ネコを拾うのを同級生女子に目撃されて恋が始まりそうな』非行少年担当、渡会数馬!」

数馬「はあ?拾わねーよ。お前か羽矢ん家の前に段ボール運んでピンポンダッシュだ」

彰「優しいのか嫌がらせなのかわかんないやつだな!」

拓人「彰……お前それ石器時代の少女漫画設定か……本の外は2020年だぞ」

彰「うるせー!雨の中スマホで子ネコの写真とってインスタで『誰か子ネコ飼いませんか』ってタグつけたって、同級生女子段ボールしか見えねーじゃん!きゅんとこないじゃん!子ネコだって寒くてぷるぷる震えてるよ!だいたい作者はこのブログつくろうとして『日本語がろくろく見当たらん…。がじぇっとだの、うじゃじゃじぇっとだの…。名翻訳者の説明文を求む!』って何度も討ち死にしてたわ令和でも!」

拓人「ドラクエの『ただのしかばねのようだ』状態だったよな…。俺FF派だけど」

数馬「しくしく書いてるよな。これ作成途中でも、PC立ち上げるたび、
毎日のようにBloggerに映る画面が謎にいろいろ変わってて、なんでやねんと思っている」

彰「んなこたどうでもいい。
さてラスト、主人公紹介『きれいなお姉さんは好きですか』羽矢拓人~~」

拓人「待て!!!なんだそりゃ!」

彰「作者がお前とサヤさんのネタを思いついて某編集に話したら、某編集が「あは~『きれいなお姉さんは好きですか』シリーズってよくない!?」(←編集、酔いどれ中 *注:酔っぱらい編集と作家ほど頭のおかしいひとはいません)って。
で、お前の話は作者の中で『きれいなお姉さんは好きですか』カテゴリの1本になった」

数馬「……2020年の若者でそのCMフレーズ知ってるやつ、どんだけいんの?」

拓人「こぼれ話どころか、ダダ漏れじゃねーか!そんな話じゃねーだろ!?」

彰「そうか?」
数馬「そうか?」
劉輝「そうか?」
花蓮「そーお?」
拓人「……………うおっ、おかん、ここで出てくんなー!!」

数馬「……今、花蓮おばさんの間に…」
彰「もう一人……なんか、いたような……」


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+作中に登場する作家①泉鏡花+


彰「さて、俺たちの物語には、サヤさんのバイオリン曲のほかに、本もでてくる。
泉鏡花『春昼・春昼後刻』。
この本、『春昼』と『春昼後刻』で、主人公が切り替わる。前半の主人公は男、後半が女。
…が、『春昼・春昼後刻』は、これ系をよく読むひとじゃないと、文章が読みにくい、と感じるかも」

拓人「2020年に33才になってる俺でも読める気がしねぇぞ」

数馬「スマホの翻訳アプリ使えばいんじゃね?」

彰「日本語だよ!
お前ら…2020年33才になった俺の職業知ってての言いぐさか…。けど、気持ちはわかる。
小6の俺じゃまだ手がでないけど、いずれ読むときは、読みながら俺もウトウトするかも…それが「気持ちいい」んだけどさ。

いきなりこれに手を出すよりかは、泉鏡花を読んでみたいなと思った人には、
『夜叉ヶ池』『天守物語』この二つの短篇。
「巣ごもり用読書」に、俺からのおすすめだ。

小説でなく戯曲なんだけど。
どっちも美しい妖怪のお姫様が出てくる。
短いページ数なのに、登場人物たちの気持ちが濃密につまってて、セリフ一つ一つから匂い立つ。
泉鏡花の音楽的なセリフ回し、言葉の美しさ、
この作家ならではの、妖しく美しく気高く強く、なのにどこかもろい登場人物たちと、待ちうける運命…。

泉鏡花の文章は、歌うような節回しでさ、まるで音楽を聴いてるように、言葉が流れ込んでくる。

好みはあると思うけど、この作家を好きになると、物語の魅力もさることながら、
メロディアスな文章に病みつきになるんじゃないかな。
それに、登場する女性がめちゃくちゃ魅力的。共通するのは「強さ」かなあ。
それぞれにその「強さ」の種類は違ってるんだけど…きれいな、狂った美しさがどこかしらある。きれいすぎて、まっすぐすぎて、「普通じゃない」だったり、汚れながらも清らかさを失わない…いや、逆かも。不思議な美しい強さがある。そこは色々読んでのお楽しみ。
『春昼・春昼後刻』も、どーみても、男より、女のほうが、心、強いしなぁ…。
ヒーローはといえば、極め付きのいい男もいれば、謎にへたれてるのもいる…。
どんな登場人物も、すべて「突き抜けてる」、のがこの作家かも。

作者の一番好きな泉鏡花の物語は、別にある。それは内緒」

拓人「なんで?」

彰「自分だけの秘密にする楽しさがあるだろ。読書に限らずさ。
『俺はこれが超好きだー。しかしそれをこの世の誰も知らない…』ってにやけるのがいいの。
真剣に好きなものって、恥ずかしくて言えないもんだよ。
俺は絶対『一番好きな漫画・漫画家』はいわない。脳みその中身も嗜好も残らずダダ漏れにばれるからな!」

拓人「わからん」

彰「ほぉ。じゃ、サヤさんの真剣に一番好きなところ、どこか、率直にはきたまえ、友よ」

拓人「…………。…………。……………わ、かった」

彰「ほらな。そうそう『夜叉ヶ池・天守物語』ともに、一途な恋の物語だ」

数馬「恋か…」
拓人「……こ、鯉か……」
彰「拓人ー、つっこまねーぞ俺はー」

彰「この泉鏡花先生から拝借した小ネタもちょろちょろ俺たちの物語に入ってます。
たとえば俺たちがヤンキーとストリートファイトした「千蛇が沼」、
『夜叉ヶ池』にちょっとでてくる地名「剣ヶ峰の千蛇が池」からとった。
それと拓人、6歳の神隠しの時、竹やぶで拾った新聞『明治三十九年』だったろ?」

拓人「そうそう」

彰「『春昼・春昼後刻』が新聞連載開始した年だ。
あの新聞、泉鏡花の生きている時代の『落とし穴』からきたってわけだ。
よく見りゃ新聞のどっかに、リアル『春昼・春昼後刻』が載ってたかもな~」

拓人「へえ。あの新聞紙、布団にしたり、あけびやぶどう包んだり、もんでトイレットペーパーにしたりしちまったぞ。そしたら尻が真っ黒けになってさ。インクで。思い出した。そんでサヤにばれないよう川で一人でせっせとケツ洗ったんだ。よりにもよって掛け軸の窓の外は冬でさ、ケツが風邪ひくってあのことだ」

彰「……お前、せっかく書店員さんから『最高にかっこいい』なんて賛辞をもらったのに……。
(…お、数馬のやつ、『夜叉ヶ池・天守物語』の本を気にしてる…)

本作にはもう一つ『鏡花ネタ』が入っております。
わかった人は、心の中でニヤリとしてください」


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+作中に登場する作家②+

(数馬、気のないそぶりを装って『夜叉ヶ池・天守物語』をめくる)

拓人「彰、なんだこの②って…」

彰「親友の俺が読んでた作家がいたろう」

拓人「わずか一行だけでてきたあれか。『夢野久作』とかいう…
なんか…今風なのか、ちゃうのかわからん名前だよな…最近の作家???」

彰「百年前の作家です」

拓人「…………、明治39年の泉鏡花サンとどっちが年上?」

彰「………………夢野久作のが後だ。
現代日本語です。国語2のお前でも翻訳アプリなしで読めます!」

拓人(……鷹一郎が、
『小6で「夢野久作」って、彰君、大丈夫かなあ…。ふつうストレスその他もろもろたまってても、夢野久作じゃなくて、まずは雑誌コーナーで破けてる袋とじを鷹の目でさがしに夕焼けを背に本屋に走っていくものじゃないかなあ!?彰君…斜め後ろ…いや、斜め上に猛然と飛んでってる…』
って心配してたけど……)

彰「夢野久作で『巣ごもり用読書』に、俺がおすすめするのは~」

拓人「彰」

彰「なんだ、おもむろに」

拓人「飛んでいくな。――帰ってこい」

彰「……………………お前がなにをいってんだかまるきりわからんが、
本編終盤での俺の決め台詞を、不届きな意味合いでパロディしやがったのはわかった」

拓人(なんでわかったんだ……?)

彰「で、夢野久作で俺のおすすめの短編は、『瓶詰地獄』」

拓人「……なにそのタイトル!?瓶から出られなくなったアリの話とか!?」

彰「めくるめく禁断愛の短編です。どっぷり濃密な純愛系ロマンスです」

拓人「そのタイトルで!?禁断の純愛ロマンスなの!?」

彰「いやまあ雪乃も最初タイトル見て、ホラーかなあ?と思ったらしい…。
冒頭1ページのはがきだけ、がんばって読んで(読み飛ばさないで!)。
あとは夢野久作全開の物語と文章に首までつかれ!妖しい中に清らかさが漂う、手でさわれそうな禁断愛の空気をぞんぶんに耽溺してください。浮かんでこれません。
いいか、一人で夜中に部屋に鍵かけて、『ご飯ですよ~』等のおかん爆弾の急襲を避けるべく鉄壁の防空壕を築いてから、読むべし!」

拓人(……いかがわしいことする時の流儀!?)
【*作者注:古今東西読書好きの流儀です】

彰「短編がお気に召したら、レッツトライ!上級者篇。

夢野久作の遺作にして奇書と名高い長編『ドグラ・マグラ』。

超さいこう。脳みそぐるぐるします。超さいこう…。
鍵のかかった見知らぬ部屋で目を覚ました主人公(美少年)、自分がどこの誰だかわからない…。壁の向こうからふいに「いとしいお兄様、あたしはお兄様の未来の許嫁(いいなずけ)です。お兄様…」という謎の(超美少女)声が聞こえる……。冒頭読んだら最後、読まずにはいられねぇ。これ読んで寝て食って読んで寝て読んで読んで食って寝て脳みそぐるぐるしてハッと起きたら、きっと5日くらいたってます」

拓人(………彰の目つき…今、斜め上を飛行中だ……)


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+パチパチわたあめと、あのこと+

拓人「そいや作中の『パチパチわたあめ』って、今の読者知ってっかな?まだ売ってんのかなあ。駄菓子の袋入りわたあめ(わたあめはぺたんこである)で、食って、わたあめの中にはいってるつぶつぶをかみ砕くと、口の中でぱちぱち炸裂すんの」

彰「いまだに作者は『あの炸裂する謎のつぶつぶはなんだったんだろう…』と謎に思っている…。ねりねり混ぜると色がかわっていくレジェンド駄菓子『ねるねるねるね』と同じくらいがきんちょの心をわしづかみにした駄菓子の一つだった…」

拓人「しかもあの炸裂の激しさといったら、口の中はじけまくってすんげー痛ぇの」

彰「それがたまんねーんだよな。
俺の母親は『化学物質がいっぱい入ってる。体に悪いから駄菓子はだめ』って、ああいうの買ってくんなくてさ。白雪姫にでてきそうな飴にくるんだピカピカのリンゴ飴も、『あの色が体に悪い』っつってダメ。
でも子供って、そういうのが一番覚えてて、懐かしいんだよな。
俺はお前と二人で夜店で歩きながら食ったの、大人になっても覚えてると思うわ」

拓人「……うん」


彰「……さて、拓人よ……俺らの本を手に取ってくれた読者が、
読みおえたあとで、どうしても気になることが一個あると思うわけよ」

拓人「…………」

彰「…………」

拓人「……鷹一郎の名誉のために俺の推測をいうが、おかんの性格を思うと、
たぶん鷹一郎が押し倒されたほうなんじゃねーかなあ……」

彰「………………」

(本を読みながら)数馬「違うなら、それはそれで、かなりロマンティックかもな」

彰「……ああ、そうか。そうだな。真相は、二人にしかわかんないよな」


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彰「今回は俺たちの話に登場した作家ってことで、初回の本の紹介でありながら
……泉鏡花と夢野久作っつー、いきなりそこからですか、
とつっこみが入りそうな、妖しい方角に針が全開でふりきれてる感じの二人の大作家のご紹介になりました」

拓人「初回ってことは、次もあんの?」

彰「たぶんな。もともと作者はファンタジーや、児童文学に首までどっぷりつかってきたやつだし。
少女小説やライトノベルにも耽溺してたけど、「少女小説やライトノベルは『人のおすすめ』より『己で金脈をさがすごとく自分好みの本を発掘する』がゆえに最高に楽しい」ものだと思ってるから、そこはないかな。そもそもおすすめなんぞしなくても勝手に自分好みの本どんどこ発掘して本棚に積み上げてく読者層だと思うから、余計な世話ってものなのだ。自分で見つけた『すげー楽しい』本ほど、人生の宝物になる本はない」

拓人「お前はほんとに…。
で、次はなに紹介すんの?」

彰「さあ。紹介者次第じゃん?」

拓人「?お前が紹介すんじゃないの?」

彰「俺とは限らない。
雪乃のどの作品の、どのキャラクターが出てきて本の紹介をするかは、乞うご期待」

そのとき、拓人と彰と数馬から少し離れたところを、二人の人影が横切っていく。

彰「……一人…金ぴかのタヌキを小脇に抱えてなかったか?」

数馬「もう一人は、顔つぎはぎで髪の色七色だな……超クールじゃん………」

拓人「しかも片目片腕、義足っぽい足でタップダンス踊りながら歩いていった………」